ふみちゃんのいる星

77年9月号「小4」掲載 睦月とみ(矢代まさこ)

画像の著作権は小学館にあります。

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ふみちゃんはおとなしくて、めだたない、問題のない子。
いつもぼんやりしていて自分の世界をもっている子である。

きよ子(キーヨ)はふみちゃんのことを「いつもぼんやりしていてめだたない、
問題のない子。みそっかす」と思っていた。

ある日放課後に先生のいいつけによりいっしょに勉強されられる羽目になった
キーヨとふみちゃん。

「いつもぼんやりしている」訳を聞こうとして、ふみちゃんは「自分の心だけは水星にいっている」という答えだった。

キーヨ「こころだけ抜け出す・・・・。」
ふみ「あたしは水星へいくの。 地球から9000万kmはなれてるの。」
「あそこへいったらあたりいちめん光の海よ。」
「大気はおろか光をさえぎりものもないんだもの。」










あたしの心は水星のかたい地面と、岩の上をかけまわって
光のシャワーをあびてとてもきれいになるの。
だからね。あたしの心はだれよりきれいなの。 だからあたしはいつでも幸せなの。

水星からながめるお日さまはかくべつよ。 キーヨちゃん。」


水星での印象を語り始めた。
あまりのことに仰天するキーヨ。

キーヨはふみちゃんのいいわけにしか思っていなかったが、
歩道橋で、ふみちゃんの「自分の心だけは水星にいっている」という状態に
再びキーヨは出くわす。

そしてまた、水星での印象を語るのだった。
もはやキーヨはそれが本気であって、いいわけや嘘や弁解でないことを確信した。
「ふみちゃんは自分が行けないところへいって見えないものをみている・・」
キーヨはそんなふみちゃんがうらやましかった。
キーヨは妬ましさからふみちゃんのそんな状態を(遊ぶとか肩を叩く等で)
邪魔していたが、ふみちゃんが帽子をプレゼントしたことから二人は友達となる。





二人は仲間達とテニスをやっていた。
ふみちゃんはその仲間たちから小間使い扱いをされたり、テニスボールがよその家のガラスを割ったときに謝り役を頼まれたりしていた。
あいまいに笑うふみちゃん。
そんなふみちゃんの卑屈な態度に我慢ならないキーヨはついに怒りをふみちゃんにぶつけ、泣きながら、家へ帰ってしまう。
泣いているキーヨに驚いたふみちゃんはその原因がテニスボールが家の屋根へ上がってしまったことに
あると思いこみ、家の屋根へ上がり、足をすべらせて転落してしまう。

病院へ見舞いへいったキーヨは意識が戻ったフミちゃんの手をとった瞬間、
周りが金色の光に満ちている、
水星へいった夢をみる。
「みえる?キーヨちゃん。わかる?ここはとおい星の上。一度あなたときてみたかったの。 ここ・・あたしの星の上よ。」


そして夢からさめたキーヨはふみちゃんの話をおこったり、
ねたんだりせずにまじめに聞くとふみちゃんに誓う。
ふみちゃんはすでに息をひきとっていた。
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↓このときあたし(キーヨ)の心はほんとうにふみちゃんにつれられて、
行ったのだ。遠い星まで行ってすぐさま帰ってきたのだった。
そこは一度みたら決して忘れられないところ。
美しいところ。
そこは− 二度でも三度でも行きたい思うだろう光あふれるところ。
(中略)
こうしてあたしにとってクラスにとって いちばん目立たない、いちばん問題にならない、いちばんとるにたらない子だった
ふみちゃんはいまではだれより、あたしの心をとらえてしまった
ふみちゃんはいま、ふみちゃんのあこがれつづけた星の上で光に包まれて暮らしている。
あたしの心がみてきたのだからまちがいない。(以下略)